
いじめっ子の役の子って、実際も怖いのかな?
そんなふうに感じたことはありませんか?
ドラマ『女王の教室』で注目を浴びた伊藤沙莉さん。
強烈な役柄の印象とは裏腹に、実は家庭環境や学生生活には苦労も多く、それでも演技をやめなかった芯の強さが、今の彼女をつくっています。
子役時代の悩み、学校での誤解、オーディションでの挫折、そして主演を勝ち取るまでの歩みには、共感できるエピソードがたくさんあるんです。
この記事では、伊藤沙莉さんの経歴を、あえて「感情」でたどります。
どんな夢を見て、どんな言葉に救われて、どうやって“主演女優”になっていったのか。
読み終わる頃にはきっと、テレビで見る彼女の姿が、少し違って見えるかもしれません。
ハスキーボイスの名脇役から主演女優へ ─ 伊藤沙莉の転機


若くして芸歴を積み重ねてきた伊藤沙莉さんは、かつて「脇役の名手」として注目を集めました。
その独特なハスキーボイスと表現力で、印象深い“いじめっ子”役や脇役を数多く演じてきましたが、そこから主演女優としての道を切り開いていくには、実は想像以上の時間と葛藤があったんです。
周囲の評価や自身の声へのコンプレックスと向き合いながら、ひとつひとつの作品に全力を注ぎ、やがてその積み重ねが“主役”の座へとつながっていきます。
女優としての覚醒は、実力と努力、そして出会いによってもたらされたものだったのでしょうね。
「女王の教室」から続いた“いじめっ子”のイメージ
伊藤沙莉さんが世間に知られるきっかけとなったのは、2005年に放送されたドラマ『女王の教室』でした。
この作品で伊藤さんは、志田未来さん演じる主人公をいじめる生徒という強烈な役柄を演じ、一気に注目の的に。
まだ11歳という年齢ながら、あの鋭い目つきとリアリティある演技は、視聴者に強い印象を残しました。
しかしその反響は、決してポジティブなものばかりではなかったのです。
「この前、万引きしてたよね?」とクラスメイトに冗談交じりに言われたり、
ネット上には「◯組の伊藤沙莉がいじめていた」と事実無根の書き込みまでされたことも。
当時のインタビューでは、
「本当に怖がられてたし、学校でも腫れ物に触るように扱われていた」と笑い交じりに語っていますが、
内心は相当つらかったことでしょう。
しかもその後も“いじめっ子役”ばかりが舞い込んできて、
「このまま一生、人をいじめる役しか来ないのかな」なんて不安すら感じていたそうです。
まだ小学生なのに、役のイメージが現実にも影響してしまう。
役者の難しさを、伊藤さんは子役の頃から肌で感じていたんですね。
GTO出演で気づいた演技の可能性と監督の一言
その“いじめっ子イメージ”を抱えたまま、高校を卒業し、進学せずに女優業に専念することを決意した伊藤さん。
20歳のときに出演したのが、あの人気ドラマ『GTO』でした。
ここで大きな転機が訪れます。
飯塚健監督から「今のままでいい。お前はお前らしくいればいいんだよ」と言われたことで、
それまで抱えていた「自分には主演なんて無理かも」という不安がふっと軽くなったといいます。
この作品を機に、周囲の評価も変わり始めます。
それまでは「学生服を着た子役」というイメージが抜けなかった彼女に、
少しずつ“大人の役”のオファーが届くようになっていったんですね。
「18歳で事務所を移籍したとき、“もう学生役しかできない”と言われて落ち込んだ」と振り返る伊藤さん。
でもGTOの現場で、“役柄ではなく、自分自身を見てくれる人がいる”と気づいたことで、
演技に対する向き合い方が変わっていきました。
あの一言がなかったら、主演女優・伊藤沙莉は生まれていなかったかもしれません。
すぐに結果が出たわけではなく、ゆっくりと、確実に。
伊藤さんの演技人生は、そうして一歩ずつ花開いていったんですね。
幼少期の家庭環境と初舞台への道のり


伊藤沙莉さんの演技力の土台には、波乱に満ちた幼少期と、そこで育まれた豊かな感受性があります。
裕福とは言えない環境の中で、それでも笑顔を忘れずに過ごしてきた彼女の背景には、家族の絆と、表現することへの強い情熱があったんです。
ダンスで培った表現力が子役デビューの原点
伊藤さんが表現の世界に出会ったのは、わずか3歳の頃。
最初に習い始めたのは、ダンスでした。
「目立ちたがり屋だったんです」と本人も語るように、もともと人前に出ることや体を使って表現することが大好きなタイプ。
やがてその才能は、思いがけない形で開花していきます。
9歳のとき、通っていたダンススクールの掲示板に貼られていたオーディション情報に、「行ってみようか?」という軽いノリで挑戦したのが、すべての始まりでした。
そのオーディションで掴んだのが、ドラマ『14か月~妻が子供に還っていく~』の役。
当時、演技の経験はまったくなかったものの、難しい設定の役柄を堂々と演じきり、子役としてデビューを果たします。
ちなみにこのとき、彼女は自分の“声”が他の人と違うことに気づいたそう。
ハスキーで通る声質は、後に彼女の武器になっていくんですよね。
もともと人を惹きつける力があったからこそ、ダンスというツールを通じて、自然と演技の世界に足を踏み入れられたのかもしれません。
3人兄妹・母子家庭・サンリオコンテスト優勝という意外な一面
伊藤沙莉さんは、千葉県千葉市で1994年5月4日に生まれました。
3人兄妹の末っ子で、兄はお笑いコンビ「オズワルド」の伊藤俊介さんです。
両親は彼女が幼い頃に離婚し、母子家庭で育ちました。
母親は塗装職人として家族を支え、さらに母親の姉=叔母も一緒に暮らしていたことから、伊藤さんは「母親が2人いたような感覚だった」と語っています。
生活は決して楽ではなく、ボロボロのアパートに家族5人で住み、布団は3枚で皆一緒に寝ていたそうです。
でも、そんな日々の中でも家族の仲はとても良く、“貧しさ”よりも“楽しさ”を感じていたのではないかと、話を聞いていて思います。
さらに驚くのが、伊藤さんは9歳で「サンリオダンスコンテスト」のキッズ部門で優勝していること。
このエピソード、意外と知られていませんよね。
このときの夢は「プロのダンサーになること」だったそうですが、その夢が、やがて演技の道へとつながっていったのです。
貧しくても、夢を見失わなかった。
幼少期の彼女は、すでに“何者かになろう”とする力を内に秘めていたのでしょうね。
学校では“怖がられた女の子”?学歴と学生時代のリアル


テレビの中で「いじめっ子」を演じる伊藤沙莉さんは、リアルな学校生活でも誤解を受けることが多かったようです。
芸能活動と学生生活、その両立のなかで、孤独や葛藤も少なからずあったのでしょう。
けれど、それでも彼女は自分の居場所を諦めなかったんですよね。
小中高の出身校と、学生時代の意外な悩み
伊藤沙莉さんの出身小学校は、千葉市立みつわ台北小学校。
地元・千葉市内の公立校で、兄や姉とともに通っていたといいます。
続く中学校は千葉市立みつわ台中学校。
もともとは別の中学が噂されていましたが、本人がSNSで否定しています。
この頃もすでに芸能活動をしていたため、部活動は行っていなかったようですね。
そして高校は、千葉県立若松高校。
偏差値は47と中堅レベルの学校で、兄の伊藤俊介さん(オズワルド)も同じ高校の卒業生です。
伊藤さんは芸能コースのある高校ではなく、普通の共学校を選びました。
「学校くらい普通の子と話したかった」と語るように、
彼女にとって学校は、女優ではない“自分”に戻れる場所だったのでしょう。
でも、実際の学校生活は、決して平穏なものではなかったようです。
小学校の頃から「テレビに出てたよね?」と注目される一方で、『女王の教室』などで“いじめっ子”役を演じた影響で、
「この前万引きしてたでしょ?」
と冗談を言われたり、クラスメートから怖がられることも多かったそうです。
まだ小学生や中学生だった彼女にとって、それはきっと辛い体験だったと思います。
しかも、本人は人見知りではなく、むしろ外で遊ぶのが大好きな元気な子。
それなのに、“役のイメージ”で壁をつくられてしまうのは、悔しかったでしょうね。
“売れない子役”と呼ばれながらも諦めなかった理由
中学・高校と進むなかで、伊藤沙莉さんは少しずつ“仕事の少ない時期”を経験します。
出演しても脇役が多く、「売れてる」とまでは言えない時期が続きました。
そんな彼女に、なんと学校では「売れない子役」なんてあだ名がついていたそう。
「小6くらいから中学終わりまで、ずっと“売れない子役”って呼ばれてたんです」
そう話す彼女は、そのあだ名すら笑いに変える強さを持っていました。
でも、本当は心の中では不安だったはずです。
声がハスキーなことで「可愛い歌も歌えない」と悩んだり、他の子役と比べて「自分だけ目立ってない」と感じる日もあったでしょう。
それでも伊藤さんは、演技を辞めようとはしませんでした。
オーディションに落ちてばかりで、「このまま終わるのかな」と不安に思いながらも、「女優を辞めようと思ったことは、一度もない」とはっきり語る彼女。
光が見えなくても歩みを止めない。
そんな芯の強さが、後の“主演女優・伊藤沙莉”につながっていったのでしょうね。
伊藤沙莉が主演女優になるまで


名脇役として長く支持されてきた伊藤沙莉さんが、ついに“主演女優”としての評価を確立するまでには、地道な努力と、自分を信じる強さ、そしていくつかの重要な転機がありました。
遠回りのように見えたその歩みが、結果として伊藤さんだけの魅力を輝かせていくんですよね。
大学進学を選ばず進んだ茨の道
高校卒業後、伊藤さんは大学には進学せず、芸能の道一本で生きていく決断をしました。
周囲の同級生たちが“進路希望”を提出する中、彼女は「ありまっせーん」とふざけて書いて、
先生に怒られたというエピソードが残っています。
でも、それくらい揺るぎない覚悟があったということなんでしょうね。
とはいえ、決して順調なスタートではありませんでした。
オーディションには通らず、仕事も減り、
「このまま誰にも必要とされないんじゃないか」と思う時期もあったそうです。
しかも、高校卒業のタイミングで事務所を移籍したことで、「学生役しかできない子」というレッテルを貼られてしまったことも。
「大人の役が来ない。このまま私は消えるのかな」と、本気で悩んだといいます。
でも、それでも辞めなかった。
自分が“脇役”として見られることにもどかしさを感じながらも、
コツコツと、目の前の役に全力を注ぎ続けた伊藤さん。
そしてその努力が、20歳を過ぎた頃から、じわじわと報われ始めるのです。
「ひよっこ」や「光源氏くん」でブレイクを確定させた年
2017年、伊藤沙莉さんにとって大きな転機となる作品が、NHKの連続テレビ小説『ひよっこ』でした。
ヒロイン・有村架純さんの親友役として登場し、
その自然体で親しみやすい演技に「この子誰!?」と注目が集まりました。
この作品をきっかけに、一気に知名度が上がり、
同年には映画『獣道』で須賀健太さんとW主演を務めています。
この作品は彼女にとって大きな挑戦でした。
「役に真っすぐ向き合う姿勢」が多くの人の心に刺さったのかもしれませんね。
そして、2020年に主演を務めたドラマ『いいね!光源氏くん』。
ここでついに“主演女優・伊藤沙莉”として、確かなポジションを掴みました。
役どころは、現代にタイムスリップしてきた光源氏と同居するしっかり者のOL。
コメディ要素の強い作品でしたが、彼女の間の取り方や表情の細やかさが、「ああ、この人、主役を張れる人なんだ」と証明することになったんです。
子役からのキャリアを経て、“主役ができる女優”として認められるまで、およそ15年。
焦らず腐らず、自分のペースで積み上げた結果が、ようやく花開いた瞬間でした。
地味だけど、確かな足取り。
伊藤沙莉さんのブレイクは、まさに“待っていた価値がある”ものでした。
現在とこれから ─ 女優・伊藤沙莉の「深化」と「結婚」


子役時代から数えて20年以上、常に「現場」で磨き続けてきた伊藤沙莉さんの演技力は、今や唯一無二の存在感を放っています。
2020年代に入り、主演としてもナチュラルな魅力を発揮するようになった彼女は、仕事だけでなく私生活でも大きな節目を迎えました。
これまでの努力が「信頼」に変わりつつある今、伊藤さんは新しいステージに立ち始めています。
蓬莱竜太氏との結婚、そして新たなステージへ
2025年1月、伊藤沙莉さんは18歳年上の劇作家、蓬莱竜太(ほうらい りゅうた)さんとの結婚を発表しました。
蓬莱さんは舞台作品を中心に活躍してきた実力派の脚本家・演出家で、映画『ピース オブ ケイク』や、テレビドラマ『ミステリと言う勿れ』の脚本にも携わったことのある方です。
そんな二人の交際が最初に報じられたのは2022年。
週刊誌などで報じられた当初こそ、年齢差や業界内の立場の違いに話題が集まりましたが、伊藤さん本人がSNSで真摯な思いを綴ったことで、ファンからも温かく受け入れられました。
彼女が選んだパートナーは、演劇界で信頼される「物語の作り手」。
それは、“物語の中で生きる”ことを人生としてきた伊藤さんにとって、どこか必然のような気もしますよね。
結婚を発表したタイミングもまた、象徴的でした。
『ミステリと言う勿れ』や『拾われた男』などの話題作に出演し、女優としての表現の幅がますます広がっていた中での発表だったのです。
家庭を築きながら、これからどんな役に挑戦し、どんな景色を見せてくれるのか。
きっと、これからの伊藤沙莉さんは“誰かの物語を演じる女優”から、“自分の物語も大切に生きる女優”へと変わっていくのでしょうね。
穏やかな幸せを背負った伊藤さんの演技は、これまで以上に深く、人の心に沁みるはずです。
まとめ
- “いじめっ子役”から主演女優へと、長い道のりを歩んできた伊藤沙莉さん
- 幼少期の貧困や葛藤すら、自分の強さに変えてきたその生き様
- 結婚を機に、さらに深くあたたかな表現者へと進化し続けている
伊藤沙莉さんの人生は、一言で言えば“地道な努力の結晶”。
派手なスタートではなかったけれど、誰よりも丁寧に、誠実に積み上げてきた時間が、今の彼女をつくっているんですよね。
幼い頃のダンス、子役時代の葛藤、学校での誤解と寂しさ、そして進路を選ばず飛び込んだ女優という道。
どの瞬間も、決して順風満帆ではなかったけれど、それでも彼女は笑顔で進んできました。
そして今、信頼するパートナーと結婚し、ひとりの女性としても大きな転機を迎えています。
これからの伊藤沙莉さんがどんな表情で、どんな役に出会っていくのか。
その姿を見届けたくなるのは、きっと彼女の物語が、私たちの心にもどこか重なるからなんでしょうね。